【2012年8月号掲載】
シリーズ第22回 さっぽろお墓事情
その絆、千の風になっても
遠く離れていても、お盆には懐かしい顔に会える。そう考えると、お墓は確かに家族をつなぐ絆でもあります。少子化・高齢化の今だからこそ、大切な絆を見直してみませんか。
霊園・墓地の種類
お墓は、経営する主体(自治体・宗教法人・公益法人)によって3つに分けられます。
札幌市が管理運営している霊園は3か所ありますが、現在使用者募集はしていません。何年かに一度、返還された墓所の数がある程度集まった時、再公募されます。直近では2年前に141区画再募集されており、次回募集時期は未定です。申込み希望の場合は、長い目で市の広報をチェックする必要があります。
宗教法人(主に寺院)が運営する墓地は、信仰を持つ方にとって心の平穏につながります。寺院により、永代納骨の制度も配慮されているようです。ただし多くは、その宗旨・宗派の檀家になることが大前提です。
財団や社団などの公益法人を経営主体とする民間霊園は、新しくお墓を持ちたいとき、身近な存在です。近年は、サービス・利便性が向上し、明るいイメージが大切にされています。
そのほか最近は、自然葬(樹木葬、散骨)などの新しい葬送の形も話題になりましたが、樹木葬については、遺骨を埋葬する形であれば墓地の許可が必要です。また、散骨については迷惑に思う方もいるため、節度を持った対応が求められています。
永代供養を考える
社団法人ふる里公苑(真駒内滝野霊園)統括部長は「当園でも、確かに夫婦墓やふる里霊廟(合同墓)など、さまざまなニーズに備えるお墓の形をご用意しています」とお話されます。「ただ、見誤っていただきたくないのは、実態としては、お墓参りを通じてご家族の絆が引き継がれていくケースが9割であるということです」。
滝野霊園では、永代管理料を1回きりで支払う制度を原則廃止しています(承継者がいない方の特例制度有)。マンションの管理費に例えるとわかりやすいですが、それは「1度きりで『永代』を保証できるのか、例えば100年先まで管理していけるのか。永続的に霊園を維持管理する社団の責任として、毎年お墓の管理費が必要であると捉えている」からなのだそうです。しかし、「核家族化が進む昨今で、子どもや孫の代に迷惑をかけたくないというニーズも増えており、霊園として様々な対応ができるよう検討中です」ともお話されます。
子どもが自立して遠いところに住んでいたり、頼りの親族も年齢や健康に不安があったり。さまざまな事情で「自分がいなくなった後、誰がお墓を守ってくれるのだろう」と不安に感じておられる方は多いでしょう。しかし、お墓を考えることは、もう一度家族の絆を考えること。今年のお盆、大切な方との絆を見直してみてはいかがでしょうか。
【取材協力】
札幌市(保健福祉局保健所生活環境課)
社団法人ふる里公苑(真駒内滝野霊園)
シニアのための法律相談所
【第22回】
お墓や仏壇の承継、考えたことがありますか。
先祖代々受け継がれてきたお墓や仏壇をだれが引き継ぐか?という問題は結構大変です。死者を弔うべき縁故者がいなくなってしまい、無縁墓として改葬されることも珍しくありません。その一方でお墓をめぐって争いが起こることもあります。
お墓や仏壇を新たに取得するとなると、相当の出費がかかりますが、これらは相続財産ではありません。相続人であれば当然承継するというものではなく、位牌などと同じで、祖先の祭祀を主宰すべき人(祭祀主宰者)が承継します。遺体や遺骨も同様です。
法律的には祭祀主宰者の制限は何もなく、親族以外の第三者でもいいし、法人でも構いません。また、自分で生前に祭祀主宰人を指定することもできます。指定がない場合は慣習によって決められますが、慣習が明らかではないなど争いが生じたときは、家庭裁判所が定めます。裁判所は、亡くなった人と緊密な関係にあり、同人に強い心情を持つ者を承継者と定めるようです。
家族関係が複雑で、お墓や位牌のことで混乱が生ずることが予想される場合は、祭祀主宰者を遺言などで指定することをお勧めします。
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