「あるかさる」とは、北海道の方言である「~しさる」から着想した言葉で、「つい歩いてしまう」「自然と歩きたくなる」状態を表します。本プロジェクトでは、居心地が良く歩きたくなる「歩かさるまち」の実現を目指し、札幌市中心部のパブリックスペースを活用した休憩・交流拠点の設置や、回遊を誘発する仕掛け、都市の可能性を探るトークセッション等を一体的に展開します。官・民・地域が連携して市民や来訪者が自然と街を歩きたくなる仕組みを構築し、札幌らしい新たな都市の回遊性と交流のあり方を検証します。
■ 実施背景
近年、世界的に都市空間を従来の車中心から人中心へと転換し、人々の健康や地域の賑わい、持続可能な暮らしを生み出す「ウォーカブル(居心地が良く歩きたくなる)なまちづくり」が推進されています。札幌市においても「Well-Moving City SAPPORO 2045 ビジョン」を策定し、パブリックスペースの利活用を通じて、日常の中で自然と歩きたくなる「歩かさるまち」の実現を目指しています。
こうした背景のもと、北海道最大級の都市型フェスティバル「NoMaps2026」の開催機会を実証の場として活用し、官・民・地域が連携した実践的な都市実証として本プロジェクトを発足しました。市内の複数会場で展開されるフェスの熱気を街なかへとにじみ出させることで、イベント参加者だけでなく市民や来訪者が自然と立ち寄り、滞在・交流できる「余白」を都市の中に創出します。
本取り組みでは、都市・建築・公共空間に関する専門性を持つ日建設計、および同社の共創拠点である「PYNT北海道」が参画し、札幌市およびNoMaps実行委員会とともに実証を行います。都市空間の質的向上が求められる中、単なる一回限りのイベントで終わらせず、行政の掲げる将来ビジョンの実現に向け、多様な主体とともに「歩くことの新たな価値」と街の賑わいを定着させていく仕組みづくりを目指します。
■ 実施内容
本プロジェクトでは、歩きたくなるまちづくりの実現に向けた実証として、以下3つのアプローチによる取り組みを実施します。
① 【滞在拠点の創出】環境に配慮した総合受付・交流会場の設計(NoMaps OFFICIAL LOUNGE)
フェスティバルの総合案内および参加証(パス)の交換拠点となる「NoMaps OFFICIAL LOUNGE」において、木製キューブや組み立て式什器を活用し、単なる受付にとどまらず、参加者が作業・休憩・飲食・偶発的な交流を行える滞在拠点としての機能を構築します。制作にあたっては、ゴミを出さない環境配慮型(サーキュラーエコノミー・ゼロウェイスト)の考え方を取り入れ、余剰資材や再利用可能な素材を活用。イベント終了後も別のプロジェクトで使い続けられる持続可能な空間デザインを試行します。
② 【回遊の誘発】赤い「NoMaps CUBE」の配置とスマートフォンを活用したウォークラリー
イベントの賑わいを街へ広げるシンボル装置として、北海道産木材や端材(CLT材)を活用した赤い「NoMaps CUBE」を制作し、街なかの各所に配置します。お祭りの提灯のように街に熱気を広げる小さな設えとして、椅子、机、ステージ台、サイン、オブジェ、QRスポットなど多目的に展開し、ひと休みや会話のきっかけを創出します。あわせて、CUBEに設置されたQRコードをスマートフォンで読み取りながら街を巡るウォークラリーを同時開催。さらなる回遊効果を生むとともに、参加者の移動データを計測して健康増進効果などの可視化にも取り組みます。
③ 【知見の共有・議論】トークセッション「まちににじみ出すNoMaps~大通ウエストから考える、札幌らしい歩きたくなるまち~」
札幌都心・大通ウエストエリアを舞台に、歴史、都市空間、行政施策、デジタル技術、身体性・創造性など多角的な視点から「札幌らしい歩きたくなるまち」の可能性を考えるトークイベントを開催します。札幌の都市の成り立ちという「過去」、実証という「現在」、これからの都市体験という「未来」をつなぎながら、札幌における「歩く」ことの価値とポテンシャルを議論します。